夏に聴きたくなる、涼しげな音色が魅力なジャズ・ヴィブラフォン奏者カル・ジェイダーのアルバム5選
夏になると聴きたくなる音楽というのがあって、例えば、 ヨットの白いマストに左手でつかまりながら、右手にもったトランペットを吹くチェット・ベイカーがカバーを飾るアルバム『CHET BAKER & CREW』はそのひとつなのですが、涼しげな音色ならジャズ・ヴィブラフォンも負けてはいません。
- アーティスト: Chet Baker
- 出版社/メーカー: Blue Note Records
- 発売日: 2003/02/13
- メディア: CD
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ジャズ・ヴィブラフォン奏者と言えば、MJQ(モダン・ジャズ・カルテット)を率いたミルト・ジャクソンやグラミー賞を6度受賞したゲイリー・パートンといった人たちの名前をぱっと挙げることができるのですがーー
あ〜、も〜、暑くて寝られない…
ムシムシするし汗ばむし、寝苦しくてもうイヤ…
となった時に、涼しげでクールなヴィブラフォンの音色で夏の暑さを吹き飛ばせるのは、そうカル・ジェイダーがオススメです。
そもそもヴィブラフォンってどんな楽器なの?
吹奏楽部に所属していた人なら、どのような楽器なのかぴんとくるのかもしれませんが、私もジャズを聴くようになるまでは知りませんでした…
女の子にイイところを見せようと「ヴィブラフォンって楽器があるんだけど、知ってる?」と聞いたら、「知ってるよ、吹奏楽部の時にちょっと叩いたことあるし」と撃沈したのはもう恥ずかしいおもひでです…
さて、気を取り直してーー
ヴィブラフォンは木琴や鉄琴のような鍵盤打楽器。
下の画像は、サックス奏者のスタン・ゲッツと共演したアルバムなのですが、左側の眼鏡をかけてひょろっとした佇まいの男性がカル・ジェイダーで、ばちをもって叩いているのがヴィブラフォンです。
カル・ジェイダーってどんな人?
カル・ジェイダーの略歴に関しては、ウィキペディアを検索しても出てこないので、簡単に人物を紹介します。
ビートニクを代表するアメリカの小説家ジャック・ケルアックが『路上』の中で「神様」と称したクール・ジャズの第一人者ジョージ・シアリングの楽団に1953年にヴィブラフォン奏者として加入したカル・ジェイダーは、その後、スタン・ゲッツとの共演などを通じて「Verve」レコードでヒットを連発しました。
69年にゲイリー・マクファーランドとともに設立したSkyeレコードに在籍するのですが、71年のマクファーランドの死によって、2年ほどでその活動に終止符が打たれてしまいます。
その後はVerveやfantasyでアルバムを発表し、82年に演奏ツアーとして訪れていたフィリピンのマニラで心臓発作により死亡。
カル・ジェイダーのヴィブラフォン奏者としての活動を列挙すると、とても味気ない記述になってしまいますが、参考までに。
発表されたアルバムのカバー写真に写っているカル・ジェイダーは、とにかく知的な雰囲気を醸し出していて、だけれどもどこかユーモアがあって…そうしたところも彼を好きになった要因のひとつ。
カル・ジェイダーのクレジットが入ったレコードを見つけたら、ついつい買ってしまうほどに彼にゾッコンなのです。
カル・ジェイダーのアルバム5選
それでは、夏に聴きたくなる、涼しげな音色が魅力のカル・ジェイダーのアルバムを5つご紹介。
サウンズ・アウト・バート・バカラック
- アーティスト: カル・ジェイダー,ジェローム・リチャードソン,ジェリー・ドジオン,ルー・デル・ガトー,ジョージ・バーグ,ジョージ・マージ,マイク・メルヴォン,ジム・ケルトナー,マーヴィン・スタン,ガーネット・ブラウン,ハーヴィー・ニューマーク,レイ・アロンジ,Walter・Kane,ゲイリー・マクファーランド
- 出版社/メーカー: インディペンデントレーベル
- 発売日: 2004/10/20
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アメリカのポップミュージックとしてヒットを連発した音楽家バート・バカラックのカバー集。
もう、ジャケットを見た瞬間に、これは「カッコいい」と一目惚れしてすぐにレコードを購入しました。
バート・バカラック×カル・ジェイダーと考えただけでも「胸がどきどき」というか「腰がムズムズ」してしまうのですが、実際に聴いてみると、誰もが一度は聴いたことがあるメロディーをジェイダーのクリアでからっとしたヴァイブで奏でるなんて、もうクールな水のシャワーを浴びている感覚になります。
ゲイリー・マクファーランドと共に設立したSkyeレコードだからこそ、こんなオシャレなアルバムができたのではないかと思えるほどの作品。
ソウル・ソース
- アーティスト: カル・ジェイダー,ドナルド・バード,ジミー・ヒース,ロニー・ヒュウイット,ケニー・バレル,リチャード・デイヴィス,グラディ・テイト
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
- 発売日: 2015/06/17
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ジャズというよりもラテン・ヴィブラフォンの名盤。
もし誰かに「ラテン音楽でなにかいいのある?」と聞かれたら、すぐに差し出すのがこの一枚です。
ディジー・ガレスピー・ビックバンドの名曲をタイトルにもってきたこのアルバムは、とにかく軽やかで涼しげなのにとってもグルーヴィーな曲がいっぱい詰まっています。
ジョージ・シアリング楽団出身のアルマンド・ペラサとジョニー・レイがつくるラテンのリズムにのせて、カル・ジェイダーのヴァイブがぴりっとした辛さのタバスコのように絶妙なアクセントを効かせていて、「ひー」と叫びだしたくなるのです。
ザ・プロフェット
女性の甘いコーラスが入るこのアルバムは、「こんなのジャズじゃない!」という人もいるのかもしれませんが、カル・ジェイダーのひんやりとした澄んだヴィブラフォンの音を聞けば、素晴らしい音楽につつまれることの幸福さをストレートに感じることができて、ジャンルで分けることなどどこかへ吹き飛んでしまいます。
「AQUARIUS」は、曲の始まりから水が身体を包み込んでしまうようで、その美しさと涼しさに思わずうっとりとしてしまいます。
寝苦しい暑さが続く夏の夜に、このアルバムをかければ、水のなかに沈んでいくような感覚に包まれてきっと涼しさを味わえるはずです。
ソーラー・ヒート
『サウンズ・アウト・バート・バカラック』と同じく、Skyeレコードの創設者ゲイリー・マクファーランドのアレンジが絶妙な一枚。
ジョアン・ドナートのブラジリアン・メロディーをフューチャーし、とても洗練されてグルーヴィーな仕上がりになっています。
タイトルの『ソーラー・ヒート』はいかにもブラジル的な「太陽のきらめき」や「暑さ」をイメージさせますが、とてもオシャレで涼しげになっています。
ラスト・ボレロ・イン・バークレー
タイトルからいかにもな出落ち感がありますが…
ベルナルド・ベルトリッチ監督の映画『ラスト・タンゴ・イン・パリ』をぱくったところにカル・ジェイダーのユーモアが感じられて、くすっと笑ってしまいます。
ジャクソン5の名曲『I WANT YOU BACK』や『NEVER CAN SAY GOOD BYE』などのカバーも腰がムズムズしてくるのですが、女性コーラスが魅力的な『CURTAIN CALL』も涼しげでオススメの1曲。
70年代という時代を反映した選曲に、思わず「オシャレだな〜」と溜息が出てしまう仕上がりのアルバムになっています。
まとめ
ヴィブラフォンは「鈴虫のように涼しげな音色」などと評されますが、カル・ジェイダーはまさにそうで、軽やかで知的で、すっーと透き通った水のように澄んでソフトな音の響きにうっとりしてしまいます。
太陽が照りつけるような昼下がりに、ジャック・ケルアックに影響を受けたビートニクの人たちは、清涼感を求めてきっとカル・ジェイダーの音楽を聴いたのではないか…
そんな想像をするだけでも胸がすっとするのです。
寝苦しい夏の夜にカル・ジェイダーの透き通った音色をあなたにーー