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ピーターラビットも子供の絵本も、大人が読むものなのだ

 

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くまのプーさん、ミッフィー、そして、ピーターラビットという絵本に登場するキャラクターの名前が、それらを書いた作者や挿絵画家の名前よりも「圧倒的」に知られているのは、幼い頃に目にした絵や大人の声を通して語られた「おはなし」のなかに作者などが登場していなかったからなのでしょう。

 

www.peterrabbit-japan.com

 

 子供にとっては、慣れ親しんだ大人の声によって語られる「おはなし」そのものに、「次はどんなことが起こるのだろう?」とドキドキしながら惹き込まれるのですから、どのような作者がこの物語を書いたのだろう? というのははるか遠くのことで、興味をもつこともなかったのです。

 

もしかしたら、絵本に登場するキャラクターや人物の話し言葉がすべて大人の声として耳に届いたのですし、舞台の物語が日本から遠く離れたイングランドやどこかの国だったとしても、不思議な気持ちにならずに聞くことができたのは、子供心に母親や父親がその物語を作ったのだと勘違いをしていたのかもしれません。

 

大人になった今、友達の出産祝いに絵本をプレゼントしようと仕事帰りに書店の絵本コーナーに立ち寄ると、色とりどりで懐かしい気分になるさまざまな本が置いてあり、手にとって読み始めると、「あれ? この本てこんなお話だっけ??」と子供頃に記憶していたお話と違っていることもあって、不思議な感覚になるのと同時にそのお話にすっかり惹き込まれてしまいます。

 

スーツ姿のアラフォー男性が絵本コーナーで長時間立ち読みをしていると、書店員の人が近づいてきて、平積みの本を整えたり棚の本を入れ替えたりし始めたので、ビアトリクス・ポターの『ピーターラビット』シリーズのミニチュア本をさっと手に取り、レジへと向かいました。

 

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ピーターラビットなら、言葉がまだわからない幼い子供でも絵を見ているだけで好奇心がそそられるのではないか、という単純な理由でその本を選んだのですが、LINEで友達にプレゼントのことを伝えると、「うちの奥さん、もともとピーターラビットが好きで、ウェッジウッドの皿もあるし、絵本ももってるんだよね」と言われ、事前のリサーチは大切だな、と痛感したのでした。

 

という訳で、手元に残った『ピーターラビット』をのんびりと読み始めると、子供の頃の記憶だけではなく、テレビや雑誌やさまざまなメディアを通して刷り込まれたおなじみの世界がそこには広がっていて、繰り返し繰り返し母親にせがんで読んでもらった「おはなし」が展開されるのですが、この歳になって読み返してみると、新鮮な気持ちになるから不思議なものです。

 

『フロプシーのこどもたち』では、レタス畑ですやすやと眠る6羽の小さな子ウサギたちが「百姓のマクレガーさん」によって袋の中に入れられ捕まってしまい、「ピーターのおとうさん」のように「にくのパイ」にされてしまうのだろうか、とハラハラするのですが、果たして幼い頃に捕まった子ウサギがどのような目に遭うのかという不安な気持ちになったのかどうかはっきりとは覚えていないのです。

 

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よくよく考えれば、美しい装丁で可愛らしいウサギたちがちょこまかと動く小気味のよい動作を想像できる『ピーターラビット』は、ウサギが食用として、あるいは毛皮の材料ともなるのだということを教えてくれるのですが、幼い頃は「捕まる=食べられる」ということが、『赤ずきんちゃん』の話を知っていればすぐに理解できるのですから、残酷なイメージは湧きにくいのでしょう。


もしかしたら、子供の情操教育としてよくないと考えたお母さんやお父さんは子ウサギが「にくのパイ」になってしまうという直接的な表現を避けるのかもしれません。

 

ウサギが食用として飼われたり捕まえられたりするのが当たり前の世代ではなく、小学校の校舎の裏手で情操教育として飼育されたり、友達の家でペットして飼われたりしているのが「普通」の環境で育ち、ニュースなどでも動物虐待が話題になるのですから、『フロプシーのこどもたち』を子供に読み聞かせる大人は、6羽の子ウサギをやすやすと捕まえられて喜ぶ「マクレガーさん」に感情移入をして語ることは少ないはずです。

「へっへっへっ、この子ウサギたちを売り飛ばせば、酒が一本飲めるぜ」というマクレガーさんの気持ちになって「おはなし」を語る大人はいるのでしょうか?

もちろん、感情移入をすることで、子供の好奇心ーーこのウサギはどうなってしまうのだろう??ーーはより高まるかもしれません。情操教育という名目で読み飛ばすのも、よりお話をリアルに再現するのも、それは読み聞かせをする人の判断次第です。

 

さてさて、子供の絵本はついつい子供向けで幼稚と思われがちですが、大人になっても十分に楽しめるものですし、何より昔から絵本は大人によって子供に語られてきたのですから、子供の成長を願う大人の「ため」の物語ではあるのです。

 

ビアトリクス・ポターの生誕150周年ということで、8/9から東京のBunkamura・ザ・ミュージアムで「ピーターラビット展」が開催されていますから、より物語に入り込めるように、一度訪れてみるのもよいかもしれません。

 

www.peterrabbit2016-17.com

 

ビアトリクス・ポターについてより深く知るためにーー