個人向け国債の購入は、日本に投票して応援するということ
個人向け国債は、今年7月の応募額が昨年の1.5倍以上と好調な売行きを見せています。
2016年2月に日本銀行が導入したマイナス金利の影響で、一般的な国債、預貯金金利が大きく下がったために、個人向け国債の特徴のひとつと言われる「最低保証利率」の0.05%という数字は、応募をする人にとって魅力的なものに映ったのでしょう。
個人向け国債は日本人に合った金融商品
個人向け国債は、日本の金利がどれだけ下がったとしても0.05%の最低保証がつくことから、「元本保証」を好む日本人にマッチした商品です。
大手銀行の定期預金の金利が0.01%へと引き下げられたことで、より個人向け国債に注目が集まっています。
個人向け国債に興味をもったら…
銀行に預けていてもお金は殖えないし、利息がつくなら個人向け国債を買ってみようかな…
よし、個人向け国債のことを調べてみよう!
個人向け国債に興味をもった人がいたとしたら、例えば、webで「個人向け国債 メリット デメリット」などのキーワードを検索するかもしれません。
すると、webページには次のような言葉が並んでいて、どんどんクリックをして内容を知りたくなります。
個人向け国債のオススメ
個人向け国債のメリットは?
個人向け国債のデメリットは?
個人向け国債と定期預金の比較
個人向け国債はどこで買えるの?
また、実際に個人向け国債を購入している人の声を聞くことができるサイトやブログを目にするかもしれません。
実体験にもとづいて、個人向け国債のメリットやデメリット、そして購入をした動機などがとてもわかりやすく書かれているwebサイトです。
こうしたサイトやブログなどを見ると、よーし、個人向け国債を始めるぞ!とより前向きな気持ちになることができます。
思い立ったが吉日!だから、早速、銀行のネットか店頭で個人むけ国債の口座を開設して…
でも、ちょっとだけ待って下さい。
もちろん、個人向け国債にメリットを感じて、自分のライフプランにマッチしているのであれば、購入するという行動を否定したり止めたりするつもりはありません。
でも、その前にちょっとだけ「個人向け国債を買うことはどういうことなのか?」を考えてみて欲しいのです。
個人向け国債を買うこととは?
個人向け国債を買うことがどのようなことを意味するのか、それを知ることで、より納得した上で購入することができます。
国債とは何でしょうか?
国債は、国がさまざまな投資家からお金を集めるために発行する債券です。簡単に言えば、お金を出してくれる人に対して国が借用書を発行するということになります。
国は、国債を買ってくれた人に元本+利息を支払うために時間を利用します。
3、5、10年といったお金を返済するまでの期間(償還期間)を設けて、その間に日本全体の経済や国民の暮らしをよくすることで、国や地方公共団体に入ってくるお金を増やします。
つまり、集めたお金を広い意味で運用し、その結果として、国債を買ってくれた人に利息をつけてお金を返すのです。
日本の国をこれからよくするために
国や地方公共団体に入ってくるお金(歳入)と出て行くお金(歳出)とのバランスが財政と言われます。
この入ってくるお金と出て行くお金が、歳入>歳出であれば黒字となり、歳入<歳出であれば赤字の状態です。
日本という国は財政赤字がどんどんと拡大しているとさまざまなメディアで取り上げられていますが、出て行くお金は名目上、「日本の国やそこに住んでいる人たちの生活や暮らしをよくするため」に使われています。
日本の国債を買うということは、日本を応援するということ
個人向け国債も「日本の国債」ですから、日本という国の信用力を利用した資産運用先である前に、「歳出」の一部として私たちの生活や暮らしをよくするために集めるお金なのです。
私たちが普段、モノやサービスを買う時には、それをつくって売っている企業を応援している気持ちは薄いかもしれません。
とは言え、私たちのお金は企業の収益として、資本力が強くなったりそこで働く人たちの給料になり、ひいてはよりよい商品やサービスが消費者に還元される仕組みになっています。
例えば、アップル(マッキントッシュ)社の製品をデザインや企業のコンセプトに共感して購入する場合、それはアップルを応援することに他なりません。
使ったお金がアップル社の収益になり、さらによりよい商品を消費者に届ける…という力に変わるのです。
応援することは投票をすること
私たちがお金を払ってモノやサービスを受け取ることは、それらに携わる企業を応援していることを意味します。
応援するということは、私たちが選挙で政治家に一票を投じるように企業に投票するということです。
私たちはモノやサービスが便利であったり安かったりすれば、そこに価値を感じてお金を払います。ただし、すべての消費が便利さと安さだけで行われるのではなく、その企業のブランド力やコンセプト、考え方に共感してお金を払うと言うこともあるのです。
例えば、環境に配慮したモノづくりをしている企業だから、他のと較べて価格が高くてもお金を払うといった行動は、その企業に投票をしていることになります。
つまり、私たちが意識しているかどうかに関わらず、お金を払うということはそこに気持ちを込めていることになるのです。
個人向け国債を買うときに大切なこと
個人向け国債を資産運用として活用すること、またそれによってお金を殖やそうとする行動を否定するつもりはありません。
ただ、個人向け国債を買うことのメリットやデメリットだけにとらわれてしまうと、その本来の目的である「お金に気持ちを乗せる」ことがおろそかになってしまいます。
日本のために国債を買ってるんだぞ、エッヘン!
などと威張るために個人向け国債を買うのはおかしなことですが、少なくとも「未来の日本」のために応援しているという気持ちをもって購入すれば、おのずと運用も上手くいくのではないでしょうか。
個人国債を買うことで、あなたの応援はきっとお金を必要としている誰かへと届くはずです。