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クマのプーさんにダイエットは必要なのか?

 

E・H・シェパードの描いた、愛らしくてどこか寂しげな雰囲気もある「ウィニー・ザ・プー」ーークリストファー・ロビンに無造作に手を引かれて、階段に何度も何度も頭をぶっつけながら物語に登場するクマのぬいぐるみーーは、アメリカの商業主義の象徴とも言える「ディズニー」の手にかかれば、丸々と太った、愛くるしいというよりも「可愛らしさ」が全面に強調された「クマのプーさん」になってしまうのです。

 

 アニメーションの世界的な発展に寄与したウォルト・ディズニーの初期のモノクローム・アニメを観れば、あの世界的に有名なキャラクターの原型とされる「マウス」がすっきりとした棒のような身体でそこかしことすばしっこく画面を動き回るのですから、世界中の誰もが知っているさまざまな場所で溢れかえっている現在の「マウス」が、いくらかダイエット不足だと指摘をされても仕方のないことなのかもしれません。

クマのプーさん (岩波少年文庫 (008))

クマのプーさん (岩波少年文庫 (008))

  • 作者: A.A.ミルン,E.H.シェパード,Alan Alexander Milne,Ernest Howard Shepard,石井桃子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2000/06/16
  • メディア: 単行本
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ウォルト・ディズニーの初期のアニメ『アリスの家を守れ』や『アリスの捕鯨船』に登場するネズミや猫やその他の動物たちは、小気味の良い動きで画面を満たし、観ている私たちを自然と幸福な気分にさせてくれるのですが、今、そうした初期の作品を観てふと気付かされるのは、アニメのなかでの主要な登場人物である「アリス」という女の子が「絵」ではなく実写によって画面に映っていることで、これは、当時のアニメーションの世界では技術的に人間を「アニメ化」することが難しかったのか、それとも、人間がアニメのキャラクターとして動く映像に登場することへの拒否の感覚があったのかははっきりとはしないものの、人間をキャラクターとして非人化するアニメへの抵抗が作り手のどこかにあったのかもしれな、などと想像を働かせることもできるのです。

 

ウォルト・ディズニーの初期アニメに登場する「アリス」が「マウス」と同様にいくらか痩せ過ぎで、少女らしいふっくらとした愛らしい雰囲気に欠けることは確か(だからと言って、作品の面白さが損なわれることはない)なのですが、それにしても不思議なのは、アニメのキャラクターは時間の経過とともに次第に丸々とする傾向があることで、ディズニー・キャラクターなどはその変遷を知るのに最適なサンプルと言えるのでしょう。初期から現代を俯瞰して眺めてみると、その相違は本当に興味深く、そう考えれば「ウィニー・ザ・プー」のあの独特なア愛くるしさをもった丸みがぷくぷくと太ったプーさんに変わってしまうのも仕方のないことなのかも、と思えてしまいます。

 

友人であるクリストファー・ロビンと愛らしいやりとりを繰り広げるシェパードの描いた「ウィニー・ザ・プー」は、ダイエットの必要性をいささかも感じない可愛らしい容姿で登場し、機敏とは言えないまでも決して愚鈍ではないユニークさを発揮して私たちを笑いに誘い、幸福な気分にさせてくれます。

大好きなハチミツを食べ過ぎてしまったせいで膨れたお腹が穴に引っかかり出られなくなってしまったというエピソードも、あの「ウィニー・ザ・プー」だから微笑ましい気持ちになれるのですし、アメリカ資本主義の象徴とも言えるファスト・フードをお腹一杯になるまで食べ続け、丸々と太ってしまった「クマのプーさん」の姿はどうしても好きになれないのです。

そうしたことを想像していると思わず溜息が出てしまいます、ぷぅー、ではなく、ふぅー、と。